令和元年 総務企画委員会(2019.12.16)

【日比たけまさ委員】

 持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択された、2030年を期限とする先進国を含む国際社会全体の17の開発目標である。先進国、途上国、民間企業、NGO、有識者など、全ての関係者の役割を重視し、誰一人取り残さない社会の実現を目指して、社会、経済、環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むものとされ、我が国では、平成28年12月にSDGs推進本部が決定したSDGs実施指針で、八つの優先課題と140の施策が盛り込まれ、率先して取り組んでいく方針が決定された。
 この中で、地方公共団体におけるSDGsの達成に向けた取り組みの推進は、平成29年12月に閣議決定したまち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版及びSDGs推進本部が決定したSDGsアクションプラン2018での日本のSDGsモデルの方向性で位置づけられ、昨年2月から3月にかけ、SDGsの達成に向けた取り組みの提案を公募し、昨年6月、SDGs未来都市の29都市及び自治体SDGsモデル事業の10事業が選定された。そして本年7月、第2回として、SDGs未来都市31都市及び自治体SDGsモデル事業10事業が選定された。
 本県は、本年7月にSDGs未来都市として選定されたことを受け、本年8月30日に、愛知県SDGs未来都市計画を策定、公表したが、SDGs未来都市に応募した背景を伺う。

【企画課主幹】
 SDGsは、経済、社会、環境の幅広い分野にわたっており、本県では、これまでもSDGsの理念を通じたさまざまな施策を実施していた。そうした中で、本県がSDGsの達成に向けて取り組むことは、三つの意義があると考えている。
 一つ目は、グローバル化が進む中、世界から選ばれる地域となるためには、国際目標であるSDGsの達成が不可欠であること、二つ目は、本県が重要政策の一つとして取り組む地方創生を推進する上でも、SDGsの理念は重要であること、三つ目は、地球上の誰一人として取り残さないというSDGsの考え方は、本県が目指す全ての人が輝く愛知と方向性を一にするものであることである。本県にとって大きな意義のあるSDGsを、地域を挙げて推進していくためには、県内の市町村や企業、大学、NPO、さらには、県民の機運醸成を図ることが重要であり、国のSDGs未来都市に選定されることが有効であると考えた。
 また、昨年12月に、愛知学長懇話会で、中部大学の学長から、県としてもSDGs未来都市に応募してほしいと提案されたこともあり、SDGs未来都市に応募した。

【日比たけまさ委員】

 計画の推進に向けては、SDGsに対する県民の認識、理解が求められるが、現状をどのように把握しているのか伺う。

【企画課主幹】
 国民を対象に二つの民間企業が行った調査では、SDGsの認知度は、一つが16パーセント、もう一つが31パーセントで、認知度はまだ低い状況である。
 こうした中で、本県が、県内居住の18歳以上の男女を対象に、本年7月に実施した県政世論調査の結果によると、SDGsという言葉を聞いたことがあるとの回答は、全体の25パーセントにとどまり、このうち、聞いたことがあり、内容もよく知っているとの回答はわずか2.5パーセントとなっている。こうしたことから、まずは県民にSDGsを周知し理解してもらうことが必要である。
 なお、このSDGsという言葉を聞いたことがあるとの回答を年齢別に見ると、最も高いのが18歳、19歳の32.1パーセントである、次代の地域づくりを担う若い世代の認知度をさらに伸ばし、中高年層に広げていくことが重要と考えている。

【日比たけまさ委員】

 SDGsはその理念からして、一人でも多くの県民に浸透が図られることが大切だと思う。
 本年の9月定例議会では、理解促進に向けた取り組みである県民向けワークショップやセミナーの開催、パンフレットの作成のための補正予算が可決されたが、現在の取り組み状況を伺う。

【企画課主幹】
 政策企画局が本年度中に実施する普及啓発事業のうち、セミナーは、一般県民を対象に来年2月に名古屋地区での開催を予定している。内容は、SDGsの基礎を学んでもらうとともに、SDGsを自分事として捉え、SDGs達成のためにあすからできることを考えてもらうきっかけになるものとしていく。
 また、ワークショップは、来年の2月から3月にかけて、三河地区と名古屋地区の2カ所で開催し、体験型のカードゲームによりSDGsを身近なものとして楽しみながら学ぶことができる内容にしていく。
 パンフレットは、県民にSDGsや愛知県SDGs未来都市計画を理解してもらうよう、わかりやすい内容とし、約1万5,000部を作成して市町村や大学、高等学校、商工団体、図書館、各県民事務所などに広く配布する予定である。

【日比たけまさ委員】

 ワークショップやセミナーの開催は、啓発活動の象徴的な取り組みであると思う。
 SDGsの浸透を願う県民を一人でも多くふやすためには、草の根的な活動も大切だと考えるが、どのような取り組みを行っているのか伺う。

【企画課主幹】
 SDGsの達成のためには、ワークショップやセミナー以外にもさまざまな手法を用いて、県民に普及啓発を図ることが重要である。
 このため、県が実施している県政お届け講座のテーマの一つとしてSDGsを登録し、県民からの依頼に応じて県職員を派遣してSDGsや本県の取り組みの説明を行うこととしており、既に申し込みがある。
 また、SDGsの認知度向上に向けて、県職員の名刺にSDGsのロゴを掲載するよう、各局に働きかけるとともに、県が記者発表する事項のうちSDGsの理念に合致するものは、SDGsのロゴや関係するアイコンを記者への配付資料に記載するよう各局に依頼している。
 さらに、SDGsの達成に向けて、全庁一丸となって取り組むため、庁内各局の職員に対する研修を行うとともに、今後、作成、改定する県の個別計画等もSDGsの理念を反映するよう、各局に働きかけている。
 このほか、環境局では、SDGsの木製ピンバッジを作成し、各種イベント等で配布するとともに、SDGsの17の目標をわかりやすく解説したパネルを作成し、各種イベント等で掲示する。

【日比たけまさ委員】

 国際連合のSDGsバッジを着用していたときに、何のバッジなのかとたびたび尋ねられてはSDGsの取り組みを説明してきたが、本年10月に受領した愛知県のSDGsバッジを着用してからは、従来の問い合わせに加えて、SDGsに関心のある人から、そのバッジを見たことがないが、どこのSDGsバッジなのかとの問い合わせも多くなり、より多くの人に本県のSDGsに対する取り組みを伝えることができている。県庁内でも一部の職員にしか配付されていないと聞いている。環境局の所管になるが、ぜひ多くの人に着用してもらうようにしてほしい。
 先日、昨年度の自治体SDGsモデル事業に選定された長崎県壱岐市を調査してきた。特徴の一つとして、2030年の壱岐市の経済や生活の具体的なイメージ、AIやIoTを活用したスマート農業、ドローンを使った輸送、移動は自動運転のバス、遠隔の医療受診など2030年の未来を描くプロモーション動画を作成して、市内全域をカバーするケーブルテレビに定期的に放映することで、壱岐市の目指すSDGsの浸透を図っている。
 一方で、本県のSDGs未来都市計画は、包括的な内容で目指す未来図や理念が県民に伝わりにくいと感じる。広域自治体と基礎自治体の役割が違うので、難しい面があることは理解している。
 そこで、SDGsの理念浸透を図るために、県内でSDGs未来都市に選定された名古屋市、豊橋市、豊田市を初め各市町村との連携が重要になると考える。連携に向けての取り組みを伺う。

【企画課主幹】
 県全域でSDGsの達成に向けて取り組んでいくためには、県内のSDGs未来都市である名古屋市、豊橋市、豊田市はもとより、県内の市町村との連携が重要であると考えている。こうした考えのもと、本年12月3日には、県内の全市町村に参加を呼びかけて、愛知県SDGs未来都市等担当者会議を開催し、本県や県内のSDGs未来都市などの取り組みを紹介し、情報の共有を図った。また、名古屋市、豊橋市、豊田市とは、来年2月から3月にかけて開催する普及啓発のセミナー、ワークショップの共催や、それぞれの取り組みの広報面での協力などの連携を進めていく。
 本県としては、こうした取り組みを通じて県内の市町村の機運を一層高め、SDGsの実現に向けてオール愛知で取り組んでいく。

【日比たけまさ委員】

 壱岐市の取り組みのもう一つの特徴は、壱岐なみらい創りプロジェクトと呼ばれる住民との対話形式による戦略テーマの決定、離島振興モデルづくりである。このプロジェクトの中心は高校生で、彼らの自由な発想を原点に事業化が進められている。
 一例として、空き家で民泊事業との原案から、遊休施設を活用した交流スペースの設置につながり、テレワークセンター開設に発展した。現在、このセンターの部屋は全て企業で埋まっており、ここをスタートアップ拠点として利用した企業がさらに事業を拡大し、地元の古民家をリノベーションした新オフィスに移転する事例まで発展している。
 このように、地元の若い世代が自分たちの島の未来に向けた持続可能な開発について考え、行政がサポートする、SDGsの理念浸透に向けた好循環が生まれている。また、子供たちへの働きかけによる環境への取り組みも検討している。
 SDGs理念浸透の鍵の一つに、学生や子供世代への教育的な観点も含めた取り組みがあると考えるが、現在の本県の課題認識と今後の展望を伺う。

【企画課主幹】
 県政世論調査の結果が示すとおり、SDGsに対する認知度は低いことから、当面はSDGsの普及啓発が大きな課題であると認識している。
 特に、SDGsは、2030年に向けて持続可能な社会をつくっていくための目標であり、次代を担う学生や子供たちにSDGsを意識した行動を実践してもらうことが重要である。
 本年度は、幅広い年代層を対象とした普及啓発を行っていくが、今後は、若い世代向けの啓発も県教育委員会などと連携しながら検討していく。
 また、普及啓発とあわせて、SDGsの推進に資する取り組みを着実に実施することも重要であり、愛知県SDGs未来都市計画に位置づけた事業、施策を初めSDGsの達成に向けた取り組みを、全庁を挙げてしっかりと進めていく。