令和元年 総務企画委員会(19.06.28)

【日比たけまさ委員】

 本年6月18日、山形県沖を震源とする地震が発生した。新潟県村上市では震度6強を観測し、人的被害や住家被害などが多く発生した。今回の地震では、津波や火災による被害はなかったとのことであるが、大規模地震発生時に懸念される火災への対策について伺う。

 内閣府が公表した大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会報告書によると、阪神・淡路大震災、東日本大震災とも、出火原因の約6割が電気関係といわれ、大規模地震時の火災被害の軽減を図るため、電気火災対策に取り組むことが強く求められている。
 電気火災対策には、設定した一定以上の揺れを感知した場合に電気を自動的にとめる器具である感震ブレーカーが効果的であり、延焼の危険性や避難困難度が特に高い地域で、緊急的、重点的な普及促進が必要であるとされている。
 感震ブレーカーの県民への普及啓発について、どのように考えているのか。

【消防保安課主幹(消防・予防)】
 大規模地震等による停電の後に電気が復旧した際、壊れたり、倒れたりした電気機器に通電して火災が発生することを防ぐため、感震ブレーカーは大変有効である。特に、木造住宅密集地では、一旦火災が発生すると同時多発的に延焼する危険性が高く、感震ブレーカーの設置は重要である。
 このため、平成29年5月、愛知県地域防災計画に県及び市町村が感震ブレーカーの普及を啓発していくことを位置づけ、昨年8月には、第三次あいち地震対策アクションプランのアクション項目に、感震ブレーカーの普及啓発を新たに追加した。
 今後も市町村と協力し、感震ブレーカーのより一層の普及啓発に努めていく。

【日比たけまさ委員】

 本県が実施した平成29年8月の防災(地震)に関する意識調査報告書によると、まだ余り感震ブレーカーの普及が進んでいないとのことである。普及が進んでいない理由は何か。

【消防保安課主幹(消防・予防)】
 平成29年8月に実施した本県の調査結果では、感震ブレーカーの存在を知らない人が54.0パーセントとなっており、感震ブレーカー自体が余り認知されていない。
 内閣府の検討会が大規模地震時の電気火災抑制策の方向性について、昨年3月に取りまとめた際の報告によれば、感震ブレーカーの普及が進んでいない主な要因として、周知不足、通電遮断及び費用負担への抵抗感の三つが指摘されている。
 一つ目の周知不足は、東日本大震災等の地震火災の出火原因の半数以上が電気に起因するものであることが知られておらず、感震ブレーカーの必要性が理解されていないことが指摘されている。
 二つ目の通電遮断は、感震ブレーカー作動時に冷蔵庫が止まることや照明が消えることへの不安があり、そのために普及が進んでいないとされている。
 三つ目の費用負担への抵抗感は、分電盤タイプの感震ブレーカーは、一般の分電盤よりも高額であること、また、既存の分電盤に追加設置する場合にも2万円程度の費用負担が発生するため、設置につながっていないということである。
 このため、感震ブレーカーが大規模地震時の電気火災対策に有効であることを広く周知し、普及に向けて啓発活動に取り組むことが重要である。

【日比たけまさ委員】

 感震ブレーカーの普及を進めるに当たり、具体的にどのような取り組みを行っているのか。

【消防保安課主幹(消防・予防)】
 感震ブレーカーは、まだ余り知られておらず、まずは広く周知することが必要である。
 このため、県、市町村、消防機関で組織するあいち防災協働社会推進協議会で作成した家庭での防災・減災対策をPRする冊子に感震ブレーカーの有効性を盛り込み周知に努めてきた。また、あいち防災フェスタや中部ライフガードテック等の防災イベントでは、県民が感震ブレーカーのデモンストレーション機器を体験し、その効果を実感してもらうなどの取り組みを行っている。
 今後は、地域の実践的な防災リーダーとして活動しているあいち防災リーダー会の協力を得て、家具固定等の耐震対策とあわせて、感震ブレーカーの普及啓発に一層取り組んでいく。
 また、名古屋大学等と連携して行う防災人材を育成する研修である防災・減災カレッジの活用や、地域防災力向上に尽力してもらっている損害保険会社の協力を得るなどし、幅広く普及啓発活動に取り組んでいく。

【日比たけまさ委員】

 県内市町村ではどのような取り組みを行っているのか。また、県と市町村との連携についても伺う。

【消防保安課主幹(消防・予防)】
 市町村にも感震ブレーカーの必要性を認識してもらい、広報等で普及啓発を行ってもらっている。また、一部の市町村は、感震ブレーカーの設置に関する補助を実施しており、本年度から犬山市、みよし市、長久手市及び扶桑町の4市町が加わり、現在は名古屋市始め12市町で補助が実施されている。今後もより多くの市町村に補助制度を導入してもらえるよう情報共有に努めていく。
 また、市町村担当者を集めた会議で感震ブレーカーのデモンストレーションを行うなど、感震ブレーカーの有効性の認識をさらに深めてもらうとともに、市町村が実施する防災イベントで、家具固定の啓発とあわせて、感震ブレーカーの普及啓発を行ってもらえるよう、今後も市町村との連携強化に努めていく。

【日比たけまさ委員】

 本県が公表した南海トラフ地震による被害は、理論上最大想定モデルの場合、火災焼失家屋約10万1,000棟、火災死者約2,400人となっている。私たち一人一人がこのことを真摯に受けとめ、自身でできる対策をしっかりとることが求められている。その一つが感震ブレーカーの設置であるので、更なる普及啓発に取り組んでほしい。
 県内で感震ブレーカーの設置を支援する市町が増加しているという答弁もあった。他県では、神奈川県、静岡県、和歌山県、徳島県で、市町を支援する県の補助事業が実施されているので、本県でも検討を進めてほしい。
 続いて、高齢運転者に起因する交通事故対策について伺う。
 本年4月19日、東京都豊島区池袋で87歳の男性が運転する乗用車が赤信号を無視して暴走し、母子2人が死亡、男女8人が重軽傷を負う大変衝撃的な事故が発生した。これ以降、連日のように高齢運転者による事故の報道があり、高齢者の運転に関する様々なデータが紹介されるとともに、社会的に大きな議論が起こっている。
 本県における交通事故のうち、高齢運転者の割合や事故の状況はどのようになっているのか。

【県民安全課主幹(県民安全)】
 本県の運転免許人口は、昨年12月時点で約510万人であり、そのうち65歳以上の高齢者は約109万人で、運転免許人口の21.3パーセントを占めている。運転手側に第一原因のある交通死亡事故は昨年149件発生しているが、このうち65歳以上の高齢運転者によるものは39件で26.2パーセントを占め、運転免許人口に比べ5パーセント程度高い値となっている。
 また、どの年齢層で事故発生件数が多いのかを比較するため、運転免許人口10万人当たりの発生件数を見ると、65歳未満では2.7件、65歳以上は3.6件、75歳以上では5.7件となっている。65歳未満と比較すると、65歳以上では1.3倍、75歳以上では2.1倍と、加齢に伴い死亡事故を起こす割合が高くなることが明らかである。
 次に、昨年、高齢運転者が第一原因となった人身事故6,326件の原因を多い順に見ると、第一に、左右の安全確認をせずに交差点に進入した等の安全不確認が約69パーセント、第二に、脇見運転や考え事をしていた等の前方不注意が約18パーセント、第三に、相手が譲ってくれると思い動静注視を怠った等の判断の誤りが約7パーセント、第四に、ハンドル操作やアクセルとブレーキ操作の誤り等の操作不適が約6パーセントとなっている。
 このうち、昨今話題となっているブレーキとアクセルの踏み間違いによる人身事故は91件、約1.4パーセントとなっており、死亡事故は内数で3件であった。

【日比たけまさ委員】

 高齢運転者の事故の割合が高い傾向は、これまでもあったと思う。防災安全局は、高齢運転者への対策としてどのようなことに取り組んできたのか。

【県民安全課主幹(県民安全)】
 本県では、愛知県交通安全対策会議で、平成28年度に策定した第10次愛知県交通安全計画に基づき、年度ごとの実施計画を策定している。この計画に基づき、国、県警察、関係機関がそれぞれの役割を明確にし、道路交通環境の整備や交通安全思想の普及徹底、車両の安全技術の推進などの交通安全対策に取り組んでいる。
 防災安全局では、主に交通安全思想の普及徹底に取り組んでおり、これまでも四季の交通安全県民運動や地域で行う交通安全講座などで、高齢者や家族で高齢者の運転や運転免許証の自主返納について話合いをしてもらうよう働きかけを行ってきた。
 また、県のホームページで、県内市町村が行っているコミュニティバスの無料乗車券の交付等の運転免許証自主返納の支援制度や、県警察が取り組んでいる認知症などの病気に関する運転適性相談等の周知に努めている。
 本年度は、新たに、高齢者がよく利用する病院や調剤薬局など100か所以上の医療施設で、夜間の交通事故防止に効果のある反射材の着用促進や運転免許証の自主返納制度を周知する動画を放映するなど、高齢運転者対策の一層の強化を図っていく。
 さらに、例年秋に、歩行者、自転車利用者及び自動車運転者全ての高齢者を対象とした啓発イベントを実施しているが、これに加えて、本年夏に、安全運転サポート車の試乗、バーチャルリアリティー体験、身体機能チェックなど、対象を高齢運転者に特化した啓発イベントを県警察や市町村、民間企業等と連携して開催していく。

【日比たけまさ委員】

 この問題は、社会的に大きな議論が起こっている。小池百合子東京都知事が東京都議会の代表質問で、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置等を後付けする高齢者に対し、購入設置費用の9割程度を補助することを明らかにしたとの報道がある。
 本県として、この件についての見解も含め、何らかの対策を行う考えがあるのか伺う。

【県民安全課主幹(県民安全)】
 国では、池袋や滋賀県大津市で発生した死亡事故等、昨今の交通事故情勢を受け、本年6月18日に関係閣僚会議を開催して未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策の実施を決定し、都道府県及び政令指定都市に通知した。この緊急対策の一環として、高齢者の安全運転を支える対策の更なる推進に向け、経済産業省、国土交通省、警察庁からそれぞれ対策の方向性が示されている。
 経済産業省では、本年10月に施行される自動車税減税等に合わせ、安全運転サポート車の購入の促進を図っていくこととしている。
 国土交通省では、衝突被害軽減ブレーキの国内基準を定め、このブレーキの新車への義務付けについて、本年内をめどに結論を得るとしている。東京都で補助制度創設が検討されている後付けの安全運転支援装置については、その開発を促進するとともに、性能認定制度を創設し、来年度からの実施を検討するとしている。
 警察庁では、安全運転支援機能を有する自動車のみに限定した運転免許制度の導入について、本年度内に結論を得るとしている。
 本県では、これらの関係省庁による緊急対策の動向を注視し、県経済産業局や県警察など愛知県交通安全対策会議の構成機関で情報を共有し、速やかに対策を講じることができるよう適切に対応していく。

【日比たけまさ委員】

 池袋で発生した交通事故の犠牲者である女性の夫であり、女児の父親が会見で発した「最愛の妻と娘を突然失い、ただただ涙することしかできず絶望している。少しでも運転に不安がある人は、車を運転しないという選択肢を考えてほしい。」という言葉が心に突き刺さっている。
 今後高齢化社会が進む中で、痛ましい事故が再び起こらないようにするためにも、高齢運転者の交通事故防止対策は大変重要である。即効性のある対策は難しいと思うが、非常に大きな問題であり、進めていかなければならない対策であるので、関係局や県警察等と連携を図るとともに、国に対してしっかり意見を言うことも含め取り組んでほしい。