令和5年 2月定例会(2023.3.8)

<議案質疑>

 歳出第四款福祉医療費第三項児童家庭費のうち、困難な問題を抱える女性支援基本計画策定費について伺います。
 今議会に提案された令和五年度当初予算は、十五の柱に沿って整理され、大村知事による提案説明では、愛知のこれからを形づくる極めて重要な事業が次々と紹介されました。
 こうした中、生活困窮、性暴力、性犯罪被害、家庭関係破綻など、複雑化、多様化する困難な問題を抱える女性を支援するための基本計画を策定という文言を聞いたとき、私はあるNPO法人の存在が頭に浮かびました。
 一人でたくさんの不安と向き合うシングルマザーに安心できる快適な住まいと助け合いのつながりを名古屋で届けますを合言葉に活動を展開するNPO法人リブクオリティ・ハブには困難な問題を抱える女性から毎日様々なSOSが飛び込みます。
 離婚前のシングルマザーAさん、彼女は、夫のDV被害に耐えられず、五歳と三歳の子供を抱え、知人の一DKの部屋に避難したそうです。しかし、銀行口座が夫の名義のため貯金がない状態である一方、夫に情報が漏れることを恐れ、様々な申請にも住所が書けず、働き先も住まいも探せないそうです。
 また、被虐待履歴のあるシングルマザーBさんは、一歳の子を抱えて離婚、親から虐待被害経験があるため、親族とは疎遠になっており、自分が一人で育てなきゃと懸命に仕事を探しました。そのかいあって何とか仕事は見つかったものの、ビジネスホテル暮らしをしているそうです。貯金ができないし、仕事を辞めたら明日寝る場所もないという状況です。
 そして、外国籍のシングルマザーCさんは、夫からのDVを受け、知人の家に避難しています。しかし、日本語は片言しか話せず、日本で仕事をしたこともありません。母国に帰りたいという思いがあるものの、子供は日本国籍で母国語が話せないことから、日本で育てるしかないと考えているそうです。
 こうした母子が陥る負のスパイラルは、住まいを起点に始まります。離婚や避難の直後の母子家庭の中には、住まいがないという状況が見られます。住まいがないとどうなるか。まず、多くの行政手続が取れません。例えば、保育園の転園や子育て関連手当の受け取りもできません。そして、行政手続ができないと仕事探しもできません。履歴書に書く住所がないからです。さらに、仕事に就けなければお金が稼げませんので、いつまでも住まいが得られないという具合で、負のスパイラルに陥るのです。住まいに困る母子家庭の方は、名古屋で年間三百五十組近く出るそうです。
 もちろん、公営住宅の優遇、母子生活支援施設の設置、運営、一時保護施設の整備等、行政も各方面で支援を展開しているものの、期間に縛られず自立を後押しできる住まいの提供という観点に立つと、行政のみの支援では難しいのが現状です。
 具体的には、一時保護施設に入ったが、その後の住む先を見つけることができず、滞在できる期限が迫っている。DVにより避難したが住む先がない。離婚が成立しておらず、母子福祉資金等、母子向けの経済支援などが受けられず引っ越し代を確保できない。母子生活支援施設に滞在しているが、働き先が遠く、育児と仕事の両立ができないといった悲痛な叫びが聞かれます。
 このような背景を踏まえ、セーフティネット住宅政策など、民間の住宅を含めた施策も展開されていますが、仮に住まいを見つけられたとしても、これだけで問題の解決とはなりません。精神的なサポートや病院や学校への接続、就労支援、地域とのつながりづくり、外国人支援など、様々な機関とつながってやっと自立に向けた道筋が見えます。これらを行政が全て継続的に行っていくことは難しく、民間との連携が重要であると考えます。
 こうした中、リブクオリティ・ハブでは、一般賃貸住宅を取得し、市場家賃よりも安い価格でシングルマザーに提供しています。物件を名古屋市内の都市部にすることで、就労先を見つけやすく、育児と仕事の両立が実現しやすい環境にしているそうです。そして、住まいを見つけた後の生活支援として、居住者の希望や困り事に合った支援をコーディネートします。連携している主体は、行政、NPO、病院、弁護士、企業、地域住民などなど五十を超えます。住まいを軸に関係性を構築しているため、継続的な見守りが可能であり、新たな課題が出た際には、早期に地域資源につなぐことができるそうです。こうして精神的・身体的DVなど深刻な状況に陥ったシングルマザー、そして子供は、様々な地域資源と関わりを持つことで、精神的な回復、就労の実現等、自立に向けた歩みを一歩一歩と進めていきます。
 ここまでシングルマザーの困窮について触れてきましたが、女性をめぐる問題は、生活困窮、性暴力、性犯罪被害、家庭関係破綻など、複雑化、多様化、複合化してきていると言われます。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、非正規職の離職やDV、自殺者数の増加など、女性の生活や生命に大きな影響をもたらしています。
 こうした中、問題を抱える女性を支援するための基本計画を策定するという今回の提案は、極めて重要な取組です。

 そこで、二点伺います。
 初めに、来年度計画を策定するに至った背景について伺います。
 次に、当事者の声をどのように計画に反映させるつもりか、また、実効性のある計画にするためには、市町村や民間団体との連携が大変重要になると考えますが、県の御所見を伺います。


<答弁要旨>

福祉局長
 困難な問題を抱える女性支援基本計画についてお答えいたします。
 女性が女性であることにより、性暴力や性的搾取等の被害に遭遇しやすい状況にあることや、予期せぬ妊娠等の女性特有の問題が存在すること、不安定な就労状況や経済的困窮といった背景を踏まえて、自立に向けた支援を包括的に提供する体制を整備するため、昨年五月に困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が成立いたしております。
 この法律におきまして、国や地方公共団体の責務が明記されておりまして、都道府県は、国が今年度中に策定予定の基本方針に則しまして、施策の実施に関する基本的な計画を定めることとされております。来年四月の法施行に向けまして、県計画の策定を進めていく予定にしておるところでございます。
 次に、当事者等の声の反映や市町村、民間団体との連携についてでございます。
 計画の策定に当たりましては、女性支援に詳しい学識経験者や関係行政機関の代表者のほか、当事者に寄り添い支援を行っている民間の施設や団体の皆様を構成員といたします検討会議を設置し、意見を集約するとともに、実際に問題を抱えて困っていらっしゃる女性自身にヒアリングを実施したいと考えております。
 また、女性に寄り添った支援を実施するためには、最も身近な存在でございます市町村や特色ある支援を行っている民間団体との連携が、議員お示しのとおり、非常に重要であると認識しておりますので、それぞれの主体が担う役割や機能を生かして、より効果的な施策を展開したいと考えております。


<要望事項>

御答弁いただきましてありがとうございました。
 日本のジェンダーギャップ指数はG7で最下位、世界全体で百十六位と後れを取っています。とりわけ経済分野は顕著で、同一労働下の賃金格差や収入格差、そして雇用格差があります。コロナの影響も直結し、失職した多くは販売やサービス業などの非正規雇用の女性です。そして、シングルマザーの二人に一人は非正規雇用であり、その影響は子供の教育機会にまで及びます。コロナ禍で窮状や家庭内暴力などの問題を抱えたままの女性が増加しています。
 こうした状況も含め、女性の福祉や人権の尊重が掲げられた今回の困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の施行の意義は極めて重要です。そして、実効性のある施策を展開するためにも、今回の基本計画には大きな期待を寄せ、以下、要望します。
 まず、女性支援センターや女性相談支援員、女性自立支援施設といった支援機関、民間団体、当事者の意見を十分に聞き取っていただきたいと思います。
 また、法では、当事者を中心に、関係機関が民間団体などと連携し支援を行う仕掛けとして、支援調整会議を定めました。地方公共団体は単独または共同で設置できますので、ぜひ制度化をお願いします。
 そして、今回の質問では民間支援機関に焦点を当てましたが、これまで公的機関として現場を支えてきた女性支援センター及び女性相談支援員の充実は不可欠です。配置、育成、処遇改善などへの取組をお願いします。
 あわせて、困難を抱える女性の支援を行政のみで行うことは難しいと思いますので、民間団体への支援充実に努めていただきますようお願いします。
 いろいろ申し述べましたが、現場の声をしっかり踏まえた議論の展開と関連予算の充実をお願いして質問を閉じます。ありがとうございました。