平成23年産業労働委員会(2011.10.3)

【日比たけまさ】

 緊急雇用創出事業基金を活用した事業について聞く。まずは、若者学習支援人材育成事業、日本版ティーチ・フォー・アメリカについて、その後の状況を確認したい。
 委託事業者及び求職者の選定方法、NPOによる研修の実施状況、教育現場における活動状況について、県としての関与と評価も合わせて教えてほしい。

【就業促進課主幹(緊急雇用支援対策)】
 この事業は、おおむね30歳未満の若年求職者に対して、教育現場での研修を通じて人材育成と就職につなげることが目的である。
 1点目の委託事業者の選定については、企画提案が4件あり、選定委員会での審査を経て、株式会社パソナとNPOキャリアデザインフォーラムの共同提案を選定した。
 2点目の若年求職者の選定については、7月8日の委託契約締結後、直ちに公募を開始し、7月25日までに35人の応募があった。心理テストやグループ面接を行った上で、15人を選定した。県就業促進課や県教育委員会の職員も応募者向け説明会や面接に立ち会った。内訳は、男女別では男9人、女6人、学歴別では大卒13人、短大卒1人、専門学校卒1人で、平均年齢は24.9歳である。
 3点目のNPO研修については、20日間で本事業の趣旨や内容の理解、基礎的なビジネスマナー、学校に関する知識・ルールの習得、対人コミュニケーション能力向上のための座学とグループワークを実施した。また、受入校の教諭を前にしたプレゼンテーションも実施した。県就業促進課の職員も現場に行き様子を見るとともに、事業者・NPOからの報告も受けている。
 4点目の9月からの教育現場研修の内容については、受入校からの要望を踏まえて定めており、学校ごとに異なる。主な内容は授業中の補助であり、発達障害等特別な配慮を要する子どもへの寄り添いや、言葉の問題で通常の授業についていけない子どもへの対応などのほか、給食指導や下校指導などを実施している。各学校には事業者やNPOが訪問しているが、県就業促進課・県教育委員会の職員も直接学校を訪問するなどして、活動を見守っているところである。


【日比たけまさ】

 今回の取組が今後どのような形で展開していくか非常に関心を持っている。初期の目的を果たすことが大前提であるが、あらゆる角度からの検証が大切と考えている。検証に当たっての留意点について、現時点での考え方を教えてほしい。

【就業促進課主幹(緊急雇用支援対策)】
 この事業は、新たな取組で試行的に実施しているものであり、事業の進展に合わせ、若者がどう成長したか、学校現場で役に立てたか、安定した就業につなぐことができたかを、NPO、学校関係者、若者自身の声を聞きながらしっかりと検証していくこととしている。


【日比たけまさ】

 前回も言ったが、若者の就労支援のための場として教育現場を使うことには疑問があるが、学校が悲鳴をあげていることも、また、産業労働部として就労支援が目的となることも承知している。ただやはり、子どもたちを第一に考慮し、今後の対応について考えていくことを要望する。
 次に、今年度の緊急雇用創出事業基金事業のひとつである「あいち戦国姫隊」であるが、どのような狙いをもって企画されたのか。8月5日にお披露目されてから約2か月が経過したが、反響はどうか、現時点での評価も合わせて聞きたい。

【観光コンベンション課主幹(観光振興)】
 本県では、多くの戦国武将ゆかりの観光資源を活用した武将観光を推進している。武将観光の更なる浸透を図るために、女性や若者など今まで歴史に興味のなかった人たちを含め、幅広い層にPRを行うため、愛知ゆかりの戦国武将の妻、娘などで構成される「あいち戦国姫隊」を結成した。平日は清洲城、犬山城、岡崎城を拠点に活動し、土・日は各地域で開催されるイベント等に参加している。拠点としている清洲城や岡崎城の方からは、訪問者が喜んでくれるとか、今までとは異なる新たな客層が増えたと聞いており、イベントなどでは席を立つ人も少なく、良いおもてなしになったなどの評価をいただいている。現在、多くの自治体や団体から出演依頼が来ており、決定しているものを含め8月から11月までで県内27市町村から68件の依頼があり、武将観光や広く愛知の観光PRになっているものと考えている。


【日比たけまさ】

 本年6月に策定された「あいち産業労働ビジョン2011-2015」では観光客誘致強化プロジェクトを掲げ、中でも武将観光を生かした観光コースの商品化を具体的な施策として取り上げている。同事業を活用し先行開始された「名古屋おもてなし武将隊」の経済効果は27億円とも言われている。
 社団法人中部経済連合会がまとめた「中部地域の新産業構造ビジョン」の中でも、観光産業は次世代リーディング産業の一つとして取り上げられ、観光客拡大には「物語の発信と創造」や「都市におけるゲーム性の創造」が重要と述べられている。
 戦国武将とそれを支える女性は、日本人の誰しもが好きな歴史物語であり、勇ましい甲ちゅうや華やかな着物は外国人観光客も引き込めると思う。また、最近ブームとなっている「宝探し」などゲーム感覚で楽しむイベントでは、企画に少しずつ変化を持たせ、観光客を継続して引き寄せ、安定した観光収入につながっている。
 しかし、緊急雇用創出事業基金事業は短期間雇用を原則としており、「あいち戦国姫隊」は今年度限りの事業となる。武将観光はまだ緒についたところであり、今後、発展的な観光需要が見込まれるため、その足掛りとなる事業を単年度で打ち切ることは大変残念に感じる。観光強化という観点から、継続に向けた取組を期待したいが、県としてどのように考えているのか。

【観光コンベンション課主幹(観光振興)】
 「あいち戦国姫隊」は、緊急雇用創出事業基金を活用した事業であるため、この3月で一旦打ち切りとなるが、来年度については、今後の予算議論の中で検討していきたいと考えている。
 姫隊の活動により、地域の歴史や戦国武将に興味を持つ層を広げることができた。今回の成果を糧として、武将観光に関する継続的な情報発信、ゲーム性による幅広い層への観光PR、地域と連携した取組などを通じて、内外からの観光客の誘致につなげていくよう努力していきたいと考えている。


【日比たけまさ】

 先日、「名古屋おもてなし武将隊」と「あいち戦国姫隊」のステージを見てきたが、相変わらずの大盛況であった。人がこれだけ集まるのは単純に楽しいからである。エンターテイメント性もあり、内容にも変化があり、何度でも見たくなる工夫があった。「おもてなし武将隊」には若い女性を中心とした幅広い層にPR力があり、名古屋城には以前見られなかった層の観光客が増えている。「あいち戦国姫隊」については、まだ始まったばかりという印象はあるものの、仕掛けの要素は十分あると感じた。
 また、最近、「知多娘。」を活用した観光PRの動画へのアクセス数が増えているとのことであり、こうした、ターゲットを絞ってリピーターを増やす取組が必要でないかと考える。従前の行政の取組から脱却した取組が功を奏しており、ぜひ武将観光を核とした柔軟な企画を継続することをお願いしたい。
 次に、緊急雇用創出事業基金事業そのものについて聞く。現在の本県の雇用情勢は、有効求人倍率は3か月連続で前月を上回っているものの、世界的な景気低迷や超円高、震災等の影響により、依然厳しい状況にある。そうした中で、今年度が事業最終年となる緊急雇用創出事業基金事業について、一部次年度の事業継続が決定したと聞いた。現時点で決まっている来年度事業の概要を教えてほしい。

【就業促進課主幹(地域雇用対策)】
 緊急雇用創出事業基金事業は、当初は平成23年度末までの事業とされており、事業を実施してきたが、昨今の社会経済情勢に対応し、国において一部要領改正が行われ、介護、医療、農林水産、環境・エネルギー、観光など今後成長が見込まれる分野における雇用創出を行う「重点分野雇用創出事業」と、人材育成と就職支援を合わせて行う「地域人材育成事業」について、平成24年度まで事業が制度上延長され、来年度も実施可能とされた。
 ただし、その財源については、国の第3次補正予算の中で「震災及び円高の影響による失業者の雇用機会創出への支援」として、要求総額2,000億円の基金の上積みが検討されているが、本県への配分額は決まっていないことから、現在、情報収集に努めているところである。
 今後、本県への配分額等が国からの予算内示によって明らかになれば、平成24年度の当初予算編成に向けて、県の各部局及び市町村から事業計画を提出してもらい、新規雇用に関する要件等を就業促進課で審査し、財政当局の査定を受けた上で、県事業として実施するものを決定し、全体を予算計上していく。


【日比たけまさ】

 本基金が来年度も継続されることは大変ありがたい。しかし、本事業は直接の県費を費やすことがないため、ややもすれば本来一般事業として行うべき業務の試験的な実施や、甘い計画策定にならないか懸念されるところである。今後の雇用情勢は予断を許さない状況にあり、次年度の計画策定にあたっては、これまでの3年間の成果と反省を十分に踏まえ、より効果的な施策の推進をぜひ要望したい。また、つなぎ的な雇用だけでなく、次の就職につながる雇用となるような事業をぜひお願いしたい。