令和4年 2月定例会(2022.3.8)

議案質疑

 歳出第7款建設費第9項住宅費のうち、住宅マスタープラン推進事業費について伺います。
 コロナ禍の生活も2年余りが経過し、私たちの生活様式や働き方に大きな変化が生まれました。その1つが在宅時間の増加です。家で過ごす時間が増える中、日々生活する住まいが安全・安心で活気ある暮らしのベースとしての役割を果たしている、この点の重要性を改めて感じました。具体的には、南海トラフ地震や豪雨などの自然災害から命を守る対策はもとより、感染症や夏場の猛暑による熱中症、冬場の室内の寒暖差によるヒートショックなど、生命や健康を脅かす様々な暮らしのリスクに対する備えが住まいには必要であるということです。
 こうした中、国は、昨年3月、住生活基本法に基づき、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画として、新たな住生活基本計画の全国計画を策定しました。
 策定された計画のポイントは大きく2点。1つは、社会環境の変化を踏まえ、新たな日常や豪雨災害等に対応した施策の方向性を記載したこと、もう1つが、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策の方向性を記載したことです。また、都道府県では、全国計画に即して、各区域内における同様の計画を策定することとなっており、現在、本県においても、新たな住宅マスタープランである2030年度までを計画期間とした愛知県住生活基本計画2030の策定が進められています。
 そこで伺います。  県は、国の全国計画を受け、どのような計画を策定するのか、また、1つ目のポイントである社会環境の変化をどのように踏まえるのか、伺います。


 次に、2つ目のポイントである住宅分野におけるカーボンニュートラル実現に向けた取組について伺います。
 国は、昨年10月、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという目標の達成に向け、新たな地球温暖化対策計画を閣議決定しました。計画では、温室効果ガス排出量の8割を占めるエネルギー起源CO2の30年度排出量を6億7700万トンとすることを目標とし、各分野の排出量において、2013年度比で、産業部門38%減、業務その他部門51%減、運輸部門35%減、エネルギー転換部門47%減とする中、家庭部門については66%減と、部門別で最も高い削減率を求めたものとなりました。
 また、国は、さきに述べた新たな住生活基本計画の全国計画の策定に続き、昨年8月には、脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方を取りまとめました。同報告書によると、2030年及び2050年に目指すべき住宅、建築物の在り方として、省エネ性能の確保、向上による省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの導入拡大を基本的な考え方とし、取組の進め方として3項目、
1.住宅、建築物における省エネ対策の強化として、主に2025年度に住宅を含めた省エネ基準への適合義務化、また、遅くとも2030年までに省エネ基準をZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)基準の水準の省エネ性能に引き上げ、適合義務化を図る
2.再生可能エネルギーの導入拡大として、主に将来における設置義務化も選択肢の一つとして、あらゆる手段を検討し、太陽光発電設備の設置促進の取組を進める
3.木材の利用拡大として、主に木造建築物などに関する建築基準の合理化、公共、民間の建築物における木造化、木質化の取組、地域材活用の炭素削減効果を評価可能なLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅、建築物の普及拡大を実施する
ことを挙げています。
 今年度、新政あいち県議団では、カーボンニュートラルの実現による魅力あるまちづくりについて、エネルギー、モビリティー、住宅、建築物、デジタルという取組の切り口を挙げ、知事に要望をしました。この中でエネルギー、モビリティー、デジタルについては、これまでの議会や今定例会で議論されている新年度予算案から様々な取組が確認できています。こうした中で、私たちにとって身近な住まいについて、今後どのようにカーボンニュートラル対策が進められていくのか、大いに関心があるところです。
 そこで、本県の新たな住生活基本計画において、2つ目のポイントである住宅分野におけるカーボンニュートラル実現に向けた取組について伺います。


<答弁要旨>

(建築局長)
初めに、本県が策定する住生活基本計画についてであります。
 住まい、まちづくりに関しては、県民の皆様のニーズに対応した施策を市町村や関係団体等と連携して体系的に展開していくため、共通の方向性を示すことが求められております。
 そこで、本県では、その指針として愛知県住生活基本計画2030の策定に取り組んでおります。
 この計画では、全国計画を踏まえた上で、災害や感染症などから命と健康が守られた暮らしを確保すること、高齢者等が安心して暮らせる住宅セーフティネットの充実を図ること、カーボンニュートラル実現に向け住宅分野での対応を図ることを3つの重点取組として位置づけることといたします。その上で、この3つの項目については、関連する成果指標の目標値を全国計画より高く設定するなどし、積極的に取り組んでまいります。
 次に、社会環境の変化についてであります。
 議員お示しのとおり、国が策定した全国計画では、コロナ禍における新しい日常や豪雨災害の頻発・激甚化などを社会環境の変化と捉え、それらに対応した施策の方向性を示しているところです。
 そこで、愛知県住生活基本計画2030においては、感染症対策として、非接触型の住宅設備機器等の周知、啓発、テレワークに対応した住まい等の普及促進を図ることとしております。
 また、災害ハザードエリアにおける住まいの安全対策の推進として、開発許可制度の的確な運用を図るとともに、ハザードマップの周知や住まいにおける浸水対策の普及啓発を行います。加えて、この地域において発生が危惧されている南海トラフ地震への備えとして、住宅の耐震化、減災化の促進に一層取り組むこととしております。  最後に、住宅分野のカーボンニュートラル実現に向けた取組についてであります。
 この取組に当たっては、国が全国計画とは別に取りまとめた脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方・進め方において示した、省エネ対策の強化、再生可能エネルギーの導入拡大、木材の利用拡大を踏まえつつ、何より、ライフサイクル全体を通じた二酸化炭素の排出量を削減できるよう、住宅を適切に維持管理し、長期にわたり住み続けられるようにすることが重要であります。

 そこで、2009年度の制度創設以来、継続して本県が全国1位の認定実績であり、省エネルギー性能が高く、適切に維持管理することが担保された長期優良住宅の一層の普及を図る計画といたします。
 あわせまして、住宅分野におけるカーボンニュートラル実現に向けた取組を分かりやすくするために、住宅の新築や改築における留意点に加え、本県の温暖な気候風土を生かした環境に配慮した暮らし方の提案などを解説した指針を取りまとめ、こうした指針を活用して、県民の皆様の意識を高め、市町村や建築関係団体等と連携して、住宅分野におけるカーボンニュートラル実現に向け、しっかり取り組んでまいります。


<要望事項>

ありがとうございました。それでは要望させていただきます。
 今回、カーボンニュートラルの実現による魅力あるまちづくりについて、住宅の面から取り上げました。
 御存じの方も多いと思いますが、日本の住宅の省エネ性能や断熱・気密性能の水準は、先進国の中で最低の水準と言われています。
 先週、杉山範子名古屋大学特任准教授のオンライン講演を拝聴する機会がありました。杉山先生は、本県の環境事業に数多く御参画いただいていらっしゃる方ですので、環境局の方はよく御存じだと思います。講演はカーボンニュートラルに関するエネルギー転換についての内容でありましたが、私は今回の質問をちょうど構想中でしたので、最後の質問時間に省エネ住宅の普及について御意見を伺いました。そこで、先生から、省エネ住宅分野で最先端を行く欧州では、法律で基準を設けた上に、条例等でそれを上回る独自基準を設けて、高気密、高断熱の住宅を増やしていった歴史があると伺いました。
 今通常国会では、先ほど紹介した脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会の取りまとめを受け、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律、建築物省エネ法の改正案が提出される予定でした。しかし、残念ながら、提出が見送られる方針との報道が先日流れました。今回に限らず、これまでも省エネ住宅推進に関する制度改正が遅れている、これが省エネ住宅に関する国の実態です。
 こうした中、山形県は2018年、鳥取県は2020年に、国の省エネ基準より厳しい断熱基準を打ち出し、それに適合する省エネ住宅を推奨、基準をクリアすることにより独自の補助を出す制度を設けています。両県が厳しい基準を設けた背景には、健康面、すなわちヒートショック対策という点も大きいようで、そのことは、やまがた健康住宅基準、とっとり健康省エネ住宅性能基準という名称からもうかがえます。ただ、この点については、省エネ住宅で最先端を行く欧州をはじめ、諸外国では居住者の健康という観点から住宅の性能基準が定められているそうです。
 健康長寿あいち、環境首都あいちを目指す本県においても、ぜひこうした観点から住宅分野におけるカーボンニュートラルに向けた取組を積極的に進めていただくことを要望して、質問を閉じます。