令和4年 経済労働委員会(2022.06.23)

【日比たけまさ委員】

 職場におけるハラスメントの実態と県の取組について伺う。
 一昨日、福岡県議会では地方議員へのハラスメント行為根絶を目指す条例案を可決した。
 議会内外でのセクシャルハラスメントやパワーハラスメント、また、投票の見返りに様々な要求をする投票ハラスメントなど、様々なハラスメントを防ぐことで政治参画を進める狙いがあり、こうした条例の制定は都道府県議会では初めてだそうである。
 投票ハラスメントという言葉は初めて聞いたが、ハラスメントに関する報道が毎日のように流れており、あらゆるハラスメントが横行していると感じている。本県の成長戦略を担うのは言うまでもなく人であり、活力ある職場がその原点であると考える。
 そこで、まず、県が設置している労働相談窓口において、パワーハラスメントに関する最近の労働相談件数や相談内容はどのようになっているのか。

【労働福祉課長】
 職場におけるいじめ、パワーハラスメントに関する労働相談件数は、2019年度が842件、2020年度が931件、昨年度は1,047件と年々増加している。
 相談内容としては、「社長から暴言などのパワーハラスメントを受けている」、「いじめで精神的に不安定になった」、「従業員がパワーハラスメントをしているのでどう対応したらよいか」などの相談が労使双方からある。
 こうした相談が増えている理由としては、コロナ禍をきっかけとした外出自粛など、生活パターンの変化に伴うストレスや、パワーハラスメントに対する社会の関心の高まりなどが影響していると考えられる。

【日比たけまさ委員】

 労働相談では職場のいじめ、パワーハラスメントの件数が増加しているとのことである。
 令和2年度厚生労働省委託事業の職場のハラスメントに関する実態調査によると、勤務先がハラスメント対策に積極的に取り組んでいると感じている労働者は、ハラスメントを経験している割合が最も低く、逆に、勤務先がハラスメント対策にあまり取り組んでいないと感じている労働者は、ハラスメントを経験した割合が最も高いという結果が出ている。
 県内の企業におけるパワーハラスメント防止対策の取組状況について、県はどのように把握しているのか。

【労働福祉課長】
 労働福祉課で毎年実施している労働条件・労働福祉実態調査では、パワーハラスメント防止対策に取り組んでいる企業の割合は76.2パーセントとなっている。
 この割合を企業規模別で見ると、労働者数が300人以上の企業では95.6パーセント、30人以上299人以下の企業では84.3パーセント、29人以下の企業では58.9パーセントとなっており、企業規模が小さいほど、取り組んでいる企業の割合は低くなっている。

【日比たけまさ委員】

 2019年6月に労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律が改正され、大企業には職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが2020年6月から義務づけられている。また、努力義務であった中小企業においても、本年4月からは義務化された。
 こうした流れも踏まえ、県ではパワーハラスメント防止について、どのような取組を実施しているのか。

【労働福祉課長】
 県の取組としては、労働相談において社会保険労務士や公認心理師などが、複雑化、多様化する相談にきめ細かく助言・指導を行う専門相談を実施している。この中で、職場におけるハラスメント対策、メンタルの不調や休業している人の職場復帰に関する相談にも対応している。
 また、中小企業の経営者や人事労務担当者を対象とする労働講座では、昨年度は職場のパワーハラスメント対策を重点テーマに4回開催し、本年度も同程度開催する予定である。
 このほか、労使のための労働法ガイドブックやわかりやすい中小企業と就業規則という啓発冊子を作成し、企業のパワーハラスメント対策への理解促進を図っている。

【日比たけまさ委員】

 職場のハラスメントに関する実態調査では、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント及び顧客等からの著しい迷惑行為について、過去3年間での勤務先での経験有無、頻度を労働者に聞いたところ、各ハラスメントを1度以上経験した者の割合は、パワーハラスメントが31.4パーセント、顧客等からの著しい迷惑行為が15.0パーセント、セクシャルハラスメントが10.2パーセントという結果が出ている。
 近年、取引先の事業主や従業員等からのパワーハラスメントや、消費者から著しい迷惑行為を受けるなど、いわゆるカスタマーハラスメントが問題となっている。こうしたカスタマーハラスメントは、従業員に過度に精神的ストレスを感じさせ、通常の業務から支障が出るケースも見られるため、企業にはカスタマーハラスメントから従業員を守る対応が求められている。
 職場におけるカスタマーハラスメントについて、県はどのように取組を実施しているのか。

【労働福祉課長】
 職場におけるカスタマーハラスメント対策については、厚生労働省が本年2月に作成したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを活用するなど、企業が自社の従業員を守る対策に適切に取り組むことが重要である。そのため、労働講座を通じて、カスタマーハラスメント対策の実情や対応方法を啓発している。
 また、当課が主催する職場のメンタルヘルス対策セミナーにおいても、カスタマーハラスメント対策の重要性について周知を実施している。

【日比たけまさ委員】

 厚生労働省の調査では、様々なハラスメントに関する記載がされており、中でも私が気になったのは、妊娠、出産に関するものである。
 過去5年間に就業中に妊娠、出産した女性労働者の中で、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、いわゆるマタニティハラスメントを受けたと回答している者の割合が26.3パーセント、過去5年間の妊娠に至る前に勤務先で妊娠、出産等に関する否定的な言動、いわゆるプレマタニティハラスメントを経験したと回答した人は17.1パーセント、過去5年間、勤務先で育児に関わる制度を利用した男性労働者の中で、育児休業等ハラスメントを受けたと回答した割合が26.2パーセントという結果であった。
 パワーハラスメント以外にもこうしたハラスメントの実態把握や、より幅広いハラスメントについての周知啓発、また、そうした研修機会を増やしてもらうことを要望する。

 続いて、観光消費喚起事業について伺う。
 本年のゴールデンウィークは、3年ぶりに緊急事態宣言などの移動制限が全国的に出されない中で、各地の人出も回復の兆しが見られた。また、懸念された連休後の大きな感染拡大も見られなかったため、今後、基本的な感染防止対策を行いながら、経済活動を進めるという段階に入っていると思う。
 そこで、最近の観光消費の状況について伺う。
 本県では、本年5月から再開した観光消費喚起事業、あいち旅eマネーキャンペーンとLOVEあいちキャンペーンがあるが、これらの利用状況を伺う。

【観光振興課長】
 まず、旅行代金等の割引分を旅行者に電子マネーで還元するあいち旅eマネーキャンペーンについて、本年6月20日時点における利用状況は、予約分を含む利用者数が12万1,379件、これに基づく想定される割引総額は約8億5,000万円となっている。
 また、旅行業者が割引した価格で県内旅行商品を販売するLOVEあいちキャンペーンについては、114者の旅行業者に対し、割引の原資となる予算額約5億円をほぼ満額交付決定している。

【日比たけまさ委員】

 本県では、割引分を旅行者に電子マネーで還元するあいち旅eマネーキャンペーンと、旅行会社が事前に割り引いて旅行商品を販売するLOVEあいちキャンペーンの二つの制度を用意しているが、中部ブロックの他県ではどのような制度になっているのか。

【観光振興課長】
 国の地域観光事業支援で中部ブロックとされている岐阜県、三重県をはじめとした他の中部8県における宿泊代金の割引方法については、旅行会社や宿泊予約サイトを通じて宿泊予約を行う際に、既に割り引かれた金額で宿泊予約できるものや、コンビニエンスストアでクーポンを発行した後に、宿泊施設への現地支払い時にクーポンを利用して割引を受けるものがある。
 本県のように事後に割引分を還元する方法と事前に割引して販売する方法の二つの制度を併用している県はない。

【日比たけまさ委員】

 他県の状況を聞くと、本県のあいち旅eマネーキャンペーンのように、事前の登録が必要で事後にキャッシュバックがあるという点は、利用者からすれば使い勝手が悪いように見える。なぜ電子マネーで割引分を還元するという、こうした制度設計にしたのか、その理由を伺う。

【観光振興課長】
 観光消費喚起事業は、感染症により大きな打撃を受けている観光関連事業者を支援することを目的としている。感染症の影響が長期化し、観光関連事業者の資金繰りが厳しさを増していることから、事業者の負担を少しでも軽減することが重要である。
 そうした中で、本県が電子マネーにより旅行者に対して割引分を還元する制度は、旅行者が割引前の宿泊代金などを事業者に支払うことにより、事業者が割引分を立て替える必要がなく、速やかに支援の効果が波及できることに特徴がある。
 ただし、スマートフォンや電子マネーの利用に不慣れな人にとっては、必ずしも利用しやすい制度ではないことを認識している。
 そこで、そうした人には、最初から割引した価格で旅行商品を販売するLOVEあいちキャンペーンの制度を用意している。
 本県では、観光関連事業者への支援に重きを置きながら、二つの事業で相互に補完し、効果を高めている。

【日比たけまさ委員】

 本県の制度が事業者の側に重きを置いていることはよく分かった。
 先日、このキャンペーンに参加していない宿泊事業者から、宿泊価格は私たちが客に提供するサービスの価値であり、価格が下がることは利用者に宿泊事業者が提供する価値を下げていると誤解をされてしまう、このような取組はおかしいのではないかという意見をもらった。現在、非常に旺盛な観光需要の中で、あえて割引をする必要があるのかという議論もある。
 観光消費喚起事業は、国の方針が二転三転しており、様々な制約がある中で、本県独自の工夫をすることが難しいと感じている。日頃から事業者、利用者の声をしっかり聞いた上で、本県の観光消費の喚起につなげてもらうことを要望する。