令和4年 県民環境委員会(2022.3.15)

【日比たけまさ委員】

 本県では、あいち地域循環圏形成プランにより、循環型社会、資源循環への取組を進めてきた。こうした中で、あいちサーキュラーエコノミー推進プランと名称を変更し、新たな計画を策定しようとしている。
 サーキュラーエコノミーとは、従来の廃棄物の発生を抑制し、有用なものを資源循環するという発生した資源を使い続ける視点に立つことで、例えば製造、設計の段階から考え、再生材を使用するなど、何度でも使用可能な循環を目指す新たな考え方であると理解している。
 そこで、あいちサーキュラーエコノミー推進プランはどのような計画なのかを伺う。

【資源循環推進課担当課長】
 本県では、あいち地域循環圏形成プランによって、循環ビジネスの振興や食品廃棄物などのバイオマス資源を地域内で循環利用することなど、3Rを中心とした資源循環を推進し、一定の成果が得られている。
 3Rは、廃棄物をいかに効率よくリサイクルするか、廃棄物の発生量をいかに抑制するかといった廃棄段階への取組が中心だったが、特に枯渇性の天然資源には限りがあることや、地球温暖化対策として、製造時においてもエネルギーを削減することが求められている。
 サーキュラーエコノミーとは、新たな資源の投入量、消費量を抑えつつ、廃棄物発生量を限りなく小さくする経済システムであり、国や経済界、先進的な企業において取組が始まっている。
 こうした状況を踏まえ、現行のあいち地域循環圏形成プランを見直すに当たり、本県として、サーキュラーエコノミーを推進することとした。
 あいちサーキュラーエコノミー推進プランの主要な施策は、サーキュラーエコノミー推進モデルを展開し、六つのモデルを創設したので、来年度から各モデルのプロジェクトチームを順次立ち上げ、事業者がモデルに関連する事業を具体化できるように支援する。
 そのほか、循環ビジネスの振興支援、人材育成と情報発信、多様な主体との連携も施策の柱としており、従来からの事業にもサーキュラーエコノミーの視点を加えた取組を進めていく。


【日比たけまさ委員】

 あいちサーキュラーエコノミー推進プランの推進モデル例として、プラスチック循環利用モデル、太陽光パネル循環利用モデル、リペア・リビルドモデル、未利用木材循環モデルなどが例示されている。
 そこで、なぜこれらのモデル展開を進めることとしたのか。また、このモデルには、具体的にどのような関係者が参画していくのか。

【地球温暖化対策課担当課長】
 モデルは、新たに取り組むプラスチック循環利用、太陽光パネル循環利用、繊維・衣類循環利用、リペア・リビルドの四つのモデルと、現行モデルを発展させる食品循環利用と未利用木材巡回利用の二つのモデルを創設した。いずれも本県の産業特性や産業廃棄物の品目ごとの循環利用率などから、本県内での循環利用が期待される分野や社会的課題などを踏まえ、有識者の意見を聞きながら創設した。
 例えばプラスチックでは、社会的課題となっているだけでなく、本県は、プラスチックの製造品出荷額が全国1位であり、化学メーカーも集積している状況である。太陽光パネルは、設置数が全国トップクラスであるが、2040年頃には使用済みとなる太陽光パネルがピークを迎えると予想されている。
 プロジェクトチームは、廃棄物処理業やリサイクル業といった静脈産業と、製造業や流通業といった動脈産業から事業者を幅広く募集するとともに、各モデルに精通する大学教授など有識者や市町村職員も参画してもらい設置する予定である。
 事業者の募集は公募のほか、各モデルに参画する事業者の事前調査などを実施し、本県からの働きかけやヒアリングなども実施しながら行いたい。


【日比たけまさ委員】

 モデルの推進方法のイメージは理解したが、サーキュラーエコノミーに対する県内企業の理解はまだ進んでいないと思う。
 そこで、県内企業の理解はどの程度進んでいるのか。また、企業だけではなく、広く県民の理解を広げることも大切だが、どのように普及させていくのか。

【地球温暖化対策課担当課長】
 本プランを検討するに当たり、本年度8月に県内事業者にアンケートを行った。その結果、サーキュラーエコノミーを聞いたことがあるという事業者は約55パーセントであったが、内容を理解している事業者は3割にも満たない状況であった。
 サーキュラーエコノミーには、リサイクル事業者などに向けた支援だけでなく、製造業やメーカーなどがその必要性を理解し、取り組むことが必要になるが、アンケートの結果のとおり、その概念はまだ根づいていない状況であるため、まずは認知度や理解度を高めることが必要である。
 このため、来年度は、サーキュラーエコノミーの概念や考え方のほか、リサイクルしやすい製品づくり、エコデザインなどのビジネス手法や先進事例を紹介するスターティングブックを作成し、事業者の普及啓発を行っていく。
 また、大規模展示会にサーキュラーエコノミーを取り入れた製品や技術、事業をPRするコーナーを用意し、本県のウェブページで紹介するなど、企業だけでなく、県民への普及も進めていきたい。


【日比たけまさ委員】

 これまでの直線型の経済活動、いわゆるリニアエコノミーを改め、資源消費の最小化と廃棄物の発生抑制を行うためには、製品を製造する動脈産業と、リサイクル等を行う静脈産業の連携や、動脈産業を支え、十分な受皿の役割を果たせる強い静脈産業であるリサイクル事業者の存在が必要になると考える。
 この点について、県としてどのように取り組むのか。

【地球温暖化対策課担当課長】
 リサイクル事業者への循環ビジネスの支援は、あいち資源循環推進センターによる相談、技術指導と、先導的、効果的なリサイクル設備の資金の一部などに補助する循環型社会形成事業費補助金を柱としている。
 相談、技術指導では、循環ビジネスの発掘、創出から事業化、事業の継続、普及展開まで総合的に支援していくものであり、今後は、サーキュラーエコノミーの視点を取り入れて、相談等にも応じていく。
 また、補助金では、施設整備だけではなく、事業化の見込み調査など、事業検討に要する経費も対象としている。
 こうした事業により、リサイクル事業者が技術やその事業手法を高度化していくことや、リサイクルしたものを資源として提供するリソーシング産業への展開、あるいは、動脈産業と連携した新たなビジネスへの展開など、より強い静脈産業となることを支援するとともに、本県の表彰制度である愛知環境賞でも優れたリサイクル技術を表彰するなど、事業者の取組を後押ししていく。


【日比たけまさ委員】

 来月施行されるプラスチック資源循環促進法は、プラスチックに係るサーキュラーエコノミーへの移行を目的とした法律と理解している。
 しかし、一口にプラスチックといっても多種多様な素材があり、また、リサイクル方法もマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルと存在する。資源にするためには、多種多様なプラスチック素材と、それぞれのリサイクルに適したプラスチックとのマッチングが必要となる。
 さらに、一つの商品の中にも様々な素材のプラスチックが混在しており、含有物質の明確化などトレーサビリティーの担保が課題である。
 このように資源循環は容易ではなく、今後は関係者の声に耳を傾けながら、粘り強く事業を展開していくことになる。
 そこで、県としてどのように資源循環を実現していくのか。あわせて、この計画による成果をどのように確認していくのか。

【地球温暖化対策課担当課長】
 プラスチック製品や素材をトレーサビリティーしていくことは、リサイクルしやすい製品づくりにつながるとともに、安心して再生資源として活用することができるため、サーキュラーエコノミーには必要な取組であると考えている。
 一方で、トレーサビリティーは、製品メーカーとリサイクル事業者が原材料の情報を共有、開示していくものであるが、現時点で複数の製品、素材を扱う製品メーカーが全ての情報を把握、管理していくことは非常に困難であり、一般的に活用されるには、時間を要する分野だと認識している。
 今回策定するあいちサーキュラーエコノミー推進プランは、プラスチック以外の製品や素材についても、最大限資源として有効に循環利用していくこととしているが、このトレーサビリティーのように、サーキュラーエコノミーの実現に向け、これから解消していかなければならない課題も多く、一朝一夕に浸透するものではないと考えている。
 このため、あいちサーキュラーエコノミー推進プランでは、目指す愛知の未来像を、サーキュラーエコノミーが浸透した循環型社会による環境負荷が最小化された環境首都あいちとしており、計画期間である今後10年間でサーキュラーエコノミーへの転換を図るため、プランに位置づけた取組を着実に進める。
 また、成果の確認については、毎年度、その進捗状況を把握するとともに、有識者が参加する会議においても成果の検証を行っていく予定である。


【日比たけまさ委員】

 本年3月2日、国連環境総会が海洋プラスチックごみ根絶を目指し、対策強化に向けた国際条約制定を盛り込んだ決議案を全会一致で採択した。2024年までに条約案をまとめる予定で、制定されれば、プラスチックごみ問題に特化した初めての国際ルールとなる。そして、このルールは、プラスチックごみの海洋流出防止にとどまらず、設計から廃棄までのプラスチック製品のライフサイクル全体を対象とした包括的な対策を想定している。
 この決議は、あらかじめ決議案を提出した日本及びペルー、ルワンダの内容が盛り込まれているため、温室効果ガスのみならず、ごみのゼロエミッションを目指すべく、サーキュラーエコノミー推進に向け、本県が先導して取組を進めるよう要望する。