令和3年 2月定例会(2021.3.9)

議案質疑

 歳出第3款県民環境費第1項県民生活総務費のうち、消費者行政活性化事業費について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、私たちの生活は大きく変化しました。その中の一つが買物です。
 当初は、新型コロナ感染拡大への不安が巻き起こした買いだめ、また、店頭から消えた商品がネット上で高く転売される問題も勃発しました。そして、緊急事態宣言により、買物のための外出を控える人が増えたこと、飲食店や小売店が時短営業や営業自粛に踏み切ったことなどから、ネット通販の利用が急増しました。
 総務省が毎月行っている家計消費状況調査では、2020年5月に、ネット通販利用世帯が初めて全体の50%を突破、12月には、前年同月比8.9ポイント増の54.6%に達しています。さらに、一世帯当たりのネット通販の支出額も大きな伸びを示しており、2020年12月の一世帯当たりのネット通販支出額は2万1579円で、前年同月比23.6%増と、大きく上昇しています。
 一方、インターネットの利用機会が増えることにより、犯罪行為にネットの利便性が悪用されることが懸念され、この点について、新政あいち、渡辺靖政策調査会長が、11月定例会代表質問にて、サイバー空間をめぐる犯罪を未然に防止するための取組として取り上げ、警察本部長からは、サイバー犯罪に関する相談件数が、10月末時点で7199件、既に令和元年の6923件を上回っているとの答弁がありました。
 そこで、県警本部に最新の数字を確認したところ、令和2年は8680件で、対前年比25.4%増、過去最多であったそうです。
 さらに、もう少し内容を伺ったところ、偽サイト、詐欺サイトに関するもの、SNSを利用したフィッシングに関するものが目立ち、また、インターネットバンキングに係る不正送金事案の認知件数も過去最多であったとのことで、警察として、最新の手口や被害防止に関する情報発信に努める中、最近では、フィッシングと偽ショッピングサイトに関する注意喚起の動画、教えて!サイバ課長をユーチューブ配信しています。
 この動画は一分という短い時間で、大変分かりやすく説明していますので、皆様、御覧いただけると幸いです。私もSNSを使い、広く情報発信させていただきました。
 さて、こうした背景の中、私自身の生活を振り返ってみますと、一昨年まで、ネット通販は年に数回、書籍購入に利用する程度でしたが、緊急事態宣言下で、外での買物を控えるようになって以降、家電、家具、健康機器、食料品等々、あらゆるものをネットで購入しています。今年度の補正予算で実施されている愛知県WEB物産展、あいちの食と物産マルシェも使いました。
 私なりに感じたネット通販の利便性や楽しさとして、実際のお店ではなかなか探せないものが、簡単に見つけられる。ふだん目にすることのない外国製商品を見ることができる点があり、実際購入もしました。  ただ、一見して外国人が記載したと分かる商品説明や問合せ先が外国である場合をはじめ、商品トラブルがあったら、どうしようと不安な気持ちになることもしばしばありました。
 そこで、インターネット通販に関する県内の消費生活相談の傾向と被害の未然防止対策について伺います。


 次に、若年者に対する取組について伺います。
 現在、私は、議員インターンシップ活動に参加している19歳の学生3名を受け入れています。
 彼らは非常に優秀で、まじめ、かつあらゆるものを吸収しようと貪欲に学んでいる一方、社会生活上の経験という点ではまだこれからです。そんな彼らと同じ年頃の若者を対象に、間もなく大きな社会変化が生まれます。
 2018年6月、成年年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる改正民法が可決、成立しました。
 1876年の太政官布告以来、140年以上続く大人の定義が、いよいよ1年後の2022年4月から変わることになります。
 ここで、成年に関する歴史について少し触れますと、古い文献にも成年の定めというものは乏しく、12世紀末の武家社会には、13歳から15歳頃に衣服の袖を詰めたり、幼名を改めたり、神事に参加したり、結婚も許されたりしたという社会慣習がありました。その後、鎖国時代も終わり、欧米では21歳から25歳ほどだった基準も考慮して、明治9年、太政官布告の成年制度が満20歳を成年と定義し、現在の民法で20歳成年を定めたであろうとの説があります。
 一方で、近年、憲法改正国民投票の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に参加してもらうための政策が進められた結果、民法においても18歳以上を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。
 世界的にも成年年齢を18歳とするのが主流であることも、年齢の引下げにつながりました。
 成年年齢の意義は、1.法定代理人の同意がなくても、契約等の法律行為を単独で行うことができる年齢、2.父母の親権に服さなくなる年齢の2点です。
 具体例を用いると、親の同意を得なくても、携帯電話を購入する、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといったことが可能になります。
 また、親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所や、進学や就職などの進路について、自分の意思で決めることができるようになります。
 成年年齢の引下げは、18、19歳の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると期待されます。
 一方で、現状、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、原則として契約を取り消すことができ、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしています。
 しかし、来年4月以降、この未成年者取消権を行使することができなくなるため、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されています。
 私が学生の頃ですと、こうした消費者トラブルになる手口はある程度限定され、注意を払うことも可能でした。しかし、現在では、先ほど触れたインターネットトラブルを含め、あらゆるわなから若年者を守ることは容易ではありません。
 こうした問題点から、参議院法務委員会では、改正民法の施行に当たり、年齢引下げに伴う消費者被害の拡大を防止する措置を政府に要請する附帯決議がされています。
 これにより、消費者契約法においては、若年者に発生している被害事例を念頭に、消費者の不安をあおる告知、例えば就職活動中の学生に対し、その不安を知りつつ、あなたは一生成功しないと告げ、就職セミナーに勧誘する、いわゆる就活セミナー商法、恋愛感情等に乗じた人間関係の乱用、例えば消費者の恋愛感情を知りつつ、契約してくれないと関係を続けられないと告げ勧誘する、いわゆるデート商法といった不当勧誘行為に対して、取消権を追加するなどの改正がされました。
 しかし、実際に契約を取り消すためには、一定の条件が必要であり、やはりこうした契約に巻き込まれぬよう教育や啓発をはじめ、現場に即したさらなる対策が求められるところです。
 そこで、成年年齢引下げが目前に迫る中、若年者への消費者教育にどのように取り組んでいかれるのか、伺います。


<答弁要旨>

(県民文化局長)
消費者行政活性化事業費についてのお尋ねのうち、インターネット通販に関する県内の消費生活相談の傾向と被害の未然防止対策についてお答えします。
 近年、スマートフォン等が急速に普及するとともに、新型コロナウイルスの感染拡大を予防する新しい生活様式として、通信販売の利用が増える中、インターネット通販に関する消費生活相談が数多く寄せられています。
 昨年1年間に、県及び市町村に寄せられたインターネット通販の相談件数は1万4204件で、過去最多となっております。
 また、インターネット通販に関する相談の内容としては、定期購入とは認識せず申し込み、解約しようとしたら高額な解約料を請求されたや、マスクなど注文した商品が届かない、子供がオンラインゲームの利用で親のクレジットカードを使い高額なアイテムを購入してしまったなどの相談が多くなっております。
 こうした中、本県では、消費者被害に遭いやすいトラブル事例をはじめ、悪質商法の手口や具体的な対処方法などを消費生活情報誌、あいち暮らしっくやウェブサイト、SNSで特集などとして発信するとともに、企業や学校への出前講座など、あらゆる機会を捉えて広く啓発し、被害の未然防止を図っております。
 さらに、新手の悪質商法などが発生した場合や特定の相談が急増した場合には、消費者トラブル情報として、その具体的な手口や対処方法を速やかに記者発表するなど、注意喚起に努めております。
 今後も、県民の皆様が消費者被害に遭うことのないよう、安全・安心な暮らしの実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
 次に、若年者への消費者教育の取組についてお答えします。
 従来から、社会経験が不足する若者、特に新成人を狙ったマルチ商法やデート商法などによる消費者トラブルが多発しておりますが、成年年齢の引下げに伴い、こうしたトラブルが18歳、19歳の若者に急激に広がることが懸念されます。
 そこで、本県では、学校現場等における若者への消費者教育の充実を図るため、教育委員会と連携しながら、消費者被害に遭わないための実践的な授業を、全ての県立高校及び特別支援学校を対象に実施するとともに、私立学校等に対しても働きかけを行ってまいりました。
 また、この授業を円滑かつ効果的に行うため、県消費生活総合センター内に配置した消費者教育コーディネーターの調整により、県の消費生活相談員をはじめ、弁護士、司法書士など、消費者問題に詳しい専門家を講師として学校現場へ派遣してまいりました。
 さらに、今年度は、新型コロナウイルス感染症防止の観点から、誰もが、どこにいても学べるよう、オンラインによる消費者教育講座も開始したところです。
 そして、法律施行の直前となる来年度は、若者向けのメッセージとして、遡求効果の高いタレント等を起用した注意喚起の動画を新たに作成し、ユーチューブにより配信することで、広く注意を呼びかけてまいります。
 成年年齢引下げが目前に迫る中、次代を担う若者たちが、消費者トラブルに巻き込まれることなく、夢や目標に向かって進んでいけるよう、消費者教育にしっかりと取り組んでまいります。